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日記です。文章をテーマとすることが多いですが、その他もろもろ。

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  吾輩は猫である。名前は『なる』という。今年2歳となるれっきとした雄猫である。
 
 吾輩の一日は吾輩を世話する努めを持つ、我が家人達を起こすところから始まる。吾輩にかしずかねばならぬ立場であるにも関わらず、いずれの者も遅くまで褥から立とうとせぬ。実にけしからん。

 まずは最も年長の雄の「お父さん」なる者に取りかかる、顔をべろりと嘗めてやる。吾輩の舌はちょっとした凶器である。こすられるとかなり痛い。
 
 だが、お父さんなる者は一向に起きようとせぬ。なんたる鈍感か。そこで吾輩は顔をぶったたくことにした。左手を素早く突き出し、いわゆるジャブの要領でお父さんを攻撃するのである。ただし、爪は隠しておく。まさか寝ている相手に本気のパンチを出すような大人げない真似はできようはずもないからである。

 だが、お父さんは「うむむむむ」と言いながら寝返りを打った。これこれ、ひとが優しくしているうちに起きるが良いぞ。

 しかたない、吾輩は反対側を向いたお父さんの顔の前まで回り込むと、右手にわずか爪を出した。さながらX-MENのウルバリンのようなものだ。

 ぬん。

 わずかに出した爪で軽くお父さんの顔をひっかく。怪我はさせないが、痛みはあるぞという加減だ。すると
 
「この野郎!」

 いきなりお父さんの右前足のパンチが飛んできた。吾輩の横顔面を襲う。足を踏ん張る間もなかった。吾輩は宙に飛ばされて襖に激突した。しかし空中で身を翻して軽やかに立ったのは、我ながらさすがに猫の体術である。
 
 見ればお父さんはまだ寝ている。寝ながら反撃したのだ。全く以てあきれた寝ぼすけだ。
 
 本来であればお父さんを叩き起こし、主人である吾輩に手を挙げたその非道の振る舞いを問いつめ、こんこんと説教を垂れねばならぬところだが、先を急ぐのでそれはやめておこう。決して、お父さんにびびったわけではない。
 
 続いて吾輩は次男の「まーくん」に向かった。まーくんは小学校の上級生だった。そのとき、まーくんがむくっと立ち上がった。
 
 おお、吾輩の気配を察して、いち早く自ら起床を決意したか、と思ったら違った。
 
「おにいちゃーん。おにいちゃーん。あのねえ、もにゃもにゃのゲームは、保存しといたよ~」

 大きな声で隣室の兄の「けいくん」に向かってしゃべると、一拍置き、真下に崩れ落ちた。同時にあきれるくらいに安らかな寝息が響いた。寝ぼけたのだ。実にダイナミックな寝ぼけ方だった。

 あきれた吾輩はお父さんの伴侶である「お母さん」に向かった。お母さんは吾輩同様、無類の寒がりであり、蓑虫さながらに堅く堅く布団を巻き付けて寝ていた。
 
 吾輩はお母さんには比較的質の高い奉仕を受けているので、舌でなめるのはやめておいた。かわりに、右手の肉球をもってとんとんと顔を叩く。するとお母さんの布団が魔法のようにするすると動き、吾輩を迎え入れた。あれ、と思ったら、吾輩は布団の中に巻き込まれていた。
 
 これ、何をする。吾輩はそのほうらを起こしに来てやったのだぞ。
 
 そう叱咤したが、布団の中はあまりに暖かかった。吾輩は……
 
 ……おっといかん。寝てしまっていた。

 時計を見るともう1時間も過ぎていた。午前6時だ。
 
 こうなったら別室で寝ているお兄ちゃんを起こそう。
 
 そう決意して部屋を出たとき、がつん、と衝撃がきた。誰かが吾輩を蹴飛ばしたのだ。

「あ、悪い、なる 」

 言い捨てて駆けていくのは中学生のお兄ちゃんだった。家から遠いところにある中学校に通っているので、早めにバスに乗らねばならないのだ。
 
 やれやれ、酷い目にあった。


 吾輩は家人を起こすのを諦め、居間に向かった、ゴロンと横になる。仕方ない、もう一眠りするか。そう思ったときには再びすとんと夢の世界に落ちた。
 
 そのうち、声がどこからか降ってきた。
 
「朝早くから、何を見ているの?」
 
 お母さんの声だ。
 
「インターネットでおもしろいページを見つけたんだよ。ペットの写真をアップしておけるんだ」
 
 お父さんが答える。
 
「なんていうページ?」
 
「ちょっとまてよ、パソコンを見てみるから……ええとね、ペットレートというページだ。 ナショナルペットレートギャラリーというのが正式の名前かな」
 
「何屋さんがやっているページなの?」
 
「保険会社だな。人間のじゃなくてペットのね。アリアンツ火災海上保険とかいうイギリスの会社だ」
 
「イギリス、ああ、それでペットの写真なのね」
 
「動物愛護の国だけあるなあ。これ見てごらん。すごいよ2万7千枚以上もペットの写真が登録されているし、ペットの種類も犬や猫だけじゃないんだ。昆虫とか牛とか」
 
「牛がペットというご家庭もあるのね」
 
「さすがに鯨、というのはないが」

「さっそく、なる の写真も登録しましょ」
 
「そうだね、おっと、『アリアンツペット保険 にゃんにゃんキャンペーン』なんてのもあるぞ。クリックしてみると、おっと」
 
「かわいい! ねこベッドだって」
 
「楽しいなあ。これほしいね」
 
「どうすればもらえるの?」
 
「ええと、応募資格だな。ペットレートにご参加いただきギネスIDを取得された方」
 
「なに、そのギネスIDって」
 
「ペットの写真を登録するともらえるらしい」
 
「じゃあ、写真撮って、登録して、応募しましょうよ」
 
「そうだね。おや、これはなんだろう。『新聞の上からねこをどかすゲーム』だって。ちょっとやってみようか」
 
「会社に遅れないようにね」
 
「うん。あ、これ、はまりそうだ」
 
「かわいい。なでなでする、と、いいこいいこすると、猫が動くのね」
 
「あー、なかなか猫の下の文字が読めない!」
 
 騒がしい。
 
 なにゆえに人間というものは、こうも遊び事に熱中するのだろう。猫族を見習って、もそっとでんと構えてはどうか。
 
 顔を上げると、すっかり仕事に向かうサラリーマンの姿になったお父さんが必死になってパソコンに向かっているのが見えた。
 
 吾輩は身を起こすや、パソコンの方へ歩いた。
 
 お母さんがモニターの前ではしゃぎはじめた。どうやら、ペットレートとやらに登録する写真を選んでいるらしい。
 
 
 わっ、なにを送るつもりだ。そんな酔狂な姿を衆人に晒すのはいかんぞ。
 
 
「どうしてなるはいつもプリンターの上で寝るんだろうね」
 
 床で寝ていたら、踏み潰されるからに決まっておろうが!
 
「わははは、これ見てご覧。プリンターの上で長くなっているぞ」
 
 どこでどう寝ようが、おぬしらの指図は受けん。
 
「じゃあ、これを登録しよう」
 
 待て!
 
 吾輩はジャンプした。机の上に着地しざま、いままさに画像を送信しようとするお父さんの指を止めに入った。
 
 かしゃ。
 
 あれ?
 
「あら、なるがエンターを押してくれたわ」
 しまった。お父さんの指があまりに太いので、キーボードのエンターキーと間違えたのだ。
 
「やっぱり、なるも自分の写真がインターネットに公開されるのを喜んでいるのね」
 
 いや、そうなんでもかんでも自分の都合のよいように考えるのは人間の悪い癖だぞ。
 
 しかし、公開された吾輩の写真は、それなりに見栄えがした。やはり、こう、できる猫というのはどの角度から撮られても、オーラを発するものだ。

 自分の都合のよいように考えるのは、猫族の良い癖である。




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